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八丈町立富士中学校

2024.3.6

生成AIを活用した探究的な学び 八丈島における地域課題解決の企画・発表

1. 実施日:令和6年1月12日(金)、1月18日(木)、1月19日(金)

2.学年・教科・単元:中学2年・総合・地域と生きる

3.ポイント
・身近な地域を題材にして、生成AIを活用した課題解決のアイデア創出を体験する。
・生成AIが知識と示唆を与える役割であることを理解し、生成AIとの対話によって自分のアイデアがより良いものになることを体感する。
・企画書作成、発表文作成のため、効果的に生成AIを活用できることを体感する。
・今までにない地域課題解決の企画をつくる体験を通じて、地域課題について考える面白さや課題解決の当事者になれる感覚をもってもらう。


4.授業の展開
①八丈町企画財政課の講演およびヒアリング
八丈町企画財政課の担当者の方から、八丈島の魅力を活かした持続可能な地域社会づくりの取り組み事例について、生徒に講演を実施。生徒たちは担当者の方に詳細なヒアリングも行い現状の取り組みを理解した上で、それぞれで八丈島の魅力・課題を調べ、より深く地域について探究した。

②「町の企画財政課に提案する」ことをゴールに、課題解決の企画アイデアをAIを活用して膨らませる
一人ひとりが調べ、まとめてきた八丈町の魅力・課題を、探究学習用に最適化されたライフイズテック社の生成AIサービスに入力し、「地域の魅力を生かした課題解決の企画案」のアイデアを検討させた。
自分のアイデアをAIに壁打ちしながら、解決策の検討・コンセプトの決定・計画書の作成を行った。アイデアの一例としては以下の通りである。
・八丈島シニアtech:島の高齢化と、若者と高齢者の情報格差を課題と捉え、高齢者にデジタルデバイスを提供。その上で、ゲーム型のプログラムを高齢者施設で開催したり、島のイベント情報等を配信、健康管理に活用できるアプリを導入することで、高齢者の「使いたい」と思う気持ちを醸成し、情報格差を是正する。
・八丈島照明プロジェクト:島の街灯不足と生活の不便さに着目し、「スマート照明で明るい島に」という企画コンセプトを掲げた。島の魅力の一つでもある星空が見えるように、あえて足元を照らす街灯を増やしたい、という提案。
・八丈島活性化企画:八丈島の自然を活用したイベントの少なさから、島を盛り上げるため「フォトウォークイベント」を島民と観光客を対象に開催し、そこで撮影した写真で展覧会を実施する。さらに優秀だった写真はポスターにして島内に貼ることで、地域の魅力発見や、観光客とのコミュニケーションの創出に繋げることを狙いとした。

生徒は生成AIと対話することでアイデア出しの最初のハードルが下がったり、足りない視点を見つけたりして、企画を深めることができていた。

③生成AIを活用し、発表資料を作成する
②で作成した企画案を元に、自分の作った?章を生成AIを活用して端的な文章にまとめ、発表スライドを作成させた。また、プレゼンの際に使用する台本の叩き台も生成AIを使って作成する生徒もいた。さらに、スライドに加える画像を画像生成AIを用いて作成し、企画イメージを視覚的にわかりやすく伝える工夫を行なった。

④グループで企画の発表を行う
グループ内で企画の発表を順に行い、他の生徒は企画の良いところ、もっと良くなるところを付箋に書き出し発表者に渡し、発表者はその付箋の内容をスライドに反映させ、企画をブラッシュアップさせた。最後にはグループの代表者がクラスで発表を行った。
発表を行いアイデアを共有することで、「地域の魅力を生かした課題解決」という一つのテーマでも、生成AIを活用しアイデアを発展させることで企画が多種多様化したり、深く考えるための支援をしてくれることを体感的に理解した。また、地域課題について考えることの面白さに気づき、課題解決を自分ごととして捉えるきっかけとなった。

5. 生徒の声
「生成AIが出したアイデアを改善するのではなく、自分のアイデアを生成AIで改善していくと良いということがわかった」
「街の課題を自分たちのことだと思って、企画財政課になりきって企画を考えることが面白かった。単純作業ではなく、クリエティブな発想力が試されるところも良かった」
「自分だけでは考えられないアイデアを生成AIが沢山出してくれたところが面白かった」

2024.3.6

生成AIを活用した技術科でのAIチャットボット制作 創造的な地域課題解決につながる学び

1. 実施日:令和5年12月18日(月)、12月19日(火)

2. 学年・教科・単元:中学2年・技術・家庭科(技術分野)「プログラミング」

3.ポイント
・生成AIの利用者になるだけでなく、生産者(生成AIの開発や生成AIを使った社会課題解決の当事者)になることを目指す。
・生成AIの基本的な仕組みやリスクを体験的に理解し、生成AIを活用する土台を醸成する。
・生成AIを活用したプログラミングのコード生成やアイデアの創出を体験する。
・プロンプトスキルを実践の中で学び、求める応答を引き出す知識・能力を養う。
・ハルシネーションを体験してその仕組みを理解し、正しい情報かの確認や、生成する情報の精度を高めるためにデータを学習させる必要性についても学ぶ。
・生成AIを活用しオリジナルチャットボットを制作することで、創造的な課題解決に生成AIが有用であることを体感する。

4.授業の展開
授業では、生成AIの使い方・留意点を理解したのち、教材として用意した「チャットボット Webアプリ」でコードを元に、地域の紹介に特化した生成AIチャットボットアプリを実装することがゴールになる。
なお、今回は生徒が使うことを想定して開発された専用の生成AIツールを通して利用した。

①生成AIを知る
教科書を用い、生成AIについての基礎知識を学び、文章生成・コード生成・画像生成の仕組みを伝えた。プロンプトに必要な情報を不足なく入れるための思考方法や、生成AIの弱点であるハルシネーションについても学ばせた。
加えて、生成AIとしりとりを行うなどミニワークを交えることで活用方法を体感させた。

②生成AIを活用し、プログラミングする
生成AIでコード(HTMLおよびCSS)を生成するためのプロンプトを入力し、その生成結果を用い、チャットボットのタイトルを追加したり背景色を変更したりし、生徒オリジナルのカスタマイズを実装させた。

③生成AIを活用し、チャットボットのアイデア出しを行う:
「八丈島の魅力が島外に伝わっていない」「八丈島に関する情報が少ない」という課題を解決するために作成しているオリジナルWebサイトを、より良いものにするためのチャットボットのコンセプトを考えさせた。
自然や観光名所を始めとしたコンセプトを生成AIと対話しながら決めていくことで、アイデア出しやアイデアの壁打ち相手に生成AIが有効であることを体感すると同時に、課題そのものへの探究も深めさせることができた。

④生成AIを活用し、チャットボットのキャラクターの性格を決める:
チャットボットにオリジナリティを加えていくために、生成AIと対話しながらチャットボットのキャラクターの名前・性格を作成させた。名前を考えるシーンでは、「もうちょっとクールにして」「漢字を入れてみて」など、自らのイメージを言語化しながらプロンプトを入力していた。中には「八丈島らしさ」にこだわり、島民と話しているかのようなチャットボットを作るため、「八丈方言を交えて話して。一人称は「ワイ」にして」などと指示する生徒もおり、各々にクリエイティビティを発揮していた。

⑤自分で作ったチャットボットと会話し、ハルシネーション(生成AIのウソ)を体験する:
学習済みの生成AIの知識の中に八丈島の観光情報は少ないことから、情報を加えていくなどしてローカライズされたチャットボットを目指させた。八丈島にあるシダ科の植物「ヘゴ」をテーマとしたチャットボットを作っていた生徒は、生成AIにヘゴが「何科か」を聞くと、自分の知識とは違う答えが出てしまったことから、八丈島観光協会のWebサイトにアクセスし、生成AIの出した答えが間違っていることを確認。正しい情報を追加していった。
プロンプトに指示や情報を追加していくことでハルシネーションが抑えられることを学ばせることができた。

⑥チャットボットの仕上げとして、キャラクターの画像を生成AIで生成する:
④で作成したキャラクターの名前や性格を元に、自分がイメージするキャラクターの画像を画像生成AIを活用して生成させた。ここでも自分が思い描くイメージを言語化し指示させた。例えば「八丈島灯台」をテーマとしたチャットボットを作る生徒は「くじらの妖精」をイメージしたキャラクターを生成した。

5. 生徒の声
「3年生になっても生成AIを使い続けたい」
「出てきた情報があっているかどうか、見極めるのが難しかった」
「入力された言葉によって、意図しない返答があったりもしたが、参考にするサイトを入力したり、予想外の言葉には返信しないなどの工夫を行ったら思うように動くようになった」
「自分のわからないことも生成AIに聞くことで、自分なりの発見がありとても面白かった。この発見を大事にしていきたいと思います」