リーディングDXスクール事業キックオフ会議開催
4月25日13時よりビジョンセンター東京京橋において、文部科学省委託事業「リーディングDXスクール事業」のキックオフ会議が開催されました。
リーディングDXスクール事業は、全ての都道府県及び政令指定都市において優れた実践の創出と普及・展開の拠点となる「リーディングDXスクール事業指定校」を設け、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末とクラウド環境を活用した効果的な教育実践を創出・モデル化し、互いの実践からの相互学習を強く推奨しつつ校種を超えて横展開することにより、全国すべての学校における教育活動の高度化の実現につなげていくことを目的としています。
キックオフ会議はハイブリッド方式で開催され、本事業に参加する全国の教育委員会や学校の担当者が集まり、オンライン約530名、会場参加約140名の計約700名が参加しました。
会議は文部科学省初等中等教育局修学支援・教材課長武藤久慶(むとう ひさよし)氏の講話から始まり、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也(ほりた たつや)教授、東京学芸大学教育学部の高橋純(たかはし じゅん)教授が講話を行いました。
講話の後は会場参加者による振り返りと質疑応答が行われ、多くの意見や質疑で会場は大いに盛り上がりました。また会議終了後は交流会が開かれ、登壇者と参加者、そして参加者同士の活発なコミュニケーションが行われました。
武藤久慶氏の講話
武藤課長から、リーディングDXスクール事業に取り組む背景と、その狙いについて熱い想いを語っていただきました。
まず、グローバル化の進展、日本の人口減少、デジタル化の進展、人生百年時代等、「なぜ令和の教育改革なのか GIGAスクール構想なのか?」という教育改革の背景としてのトレンドが示され、その中で求められる資質・能力の育成について多くの課題があることが伝えられました。
学力面での課題として、膨大なテキストの中から目的意識を持って情報を探し出す力や、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明する力が弱いことが示されるとともに、2050年に求められる高次の資質(問題発見力、的確な予測、革新性、等)を身につけるために学校教育をアップデートしていかなければならないことや、「令和の日本型学校教育」の実現を図るためにICTの活用が必要不可欠であるとして、GIGAスクール構想が打ち出されてきたこと等が語られました。
また、子どもたちの資質・能力の育成に向けて「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させる必要があり、GIGAスクール構想で整備された端末やクラウドを活用することで、量・質ともにそれらを格段に充実させることが可能との話がありました。そして、本事業が次の学習指導要領の改訂において大きな影響を与えるきわめて重要な取組であることが示されました。
堀田龍也教授の講話
堀田先生から、GIGA端末を利用した授業づくりという観点から、どんな授業をすべきか、そのような授業に向けて何をすべきか、教育委員会はどう支えればいいか、の三点を中心にお話をいただきました。
講話の冒頭で、現行の学習指導要領においては、すでに子ども一人一人が主語になるような学びが記載されており、それを支えるためのインフラ整備がGIGAスクール構想であることが示されました。
人生百年時代の中で学び直したり学び足したりして目標を達成していく時代を生きていくためのスキルを身につけることが不可欠となることを指摘し、ネット上の情報を自分で読み取れる力を身につけたり、それをもとに話し合ったりすることが必要であり、個別最適な学びや協働的な学びが同時多発的にいろいろなところで起こるよう、ICTを活用して授業づくりを変えていくことが必要であることを力強く語りました。
最後に、子ども一人一人の資質・能力を育成するため、新しい環境を積極的に活用してモデルとなる事例を創出してほしいと参加者に要請しました。
高橋純教授の講話
高橋先生からは、一人一人の子どもを主語にする学校教育という観点から、一斉でインプットを行い、教員の指示で一斉に協働する単線型の授業でなく、図画工作のようにそれぞれが異なる取組を行い、自発的に協働する複線型の授業が必要になること、そしてそれを実現するためにICTを活用することの重要性が示されました。
講話の中では数多くの具体的な実践例が示され、いずれも子供一人一人の個性に対応するためGIGA端末が活用されていることが示されました。普通教室で一斉授業という形態の限界を示され、ICT活用観・授業観を変えていくことが必要であることが不可欠になってくることが伝えられました。
講話後には、会場の参加者から活発な質疑応答が行われました。参加者たちは、ICTを活用した学習において、教員がどのような役割を果たすべきか、そして教育現場でのICT活用における課題や解決策について、積極的に意見を交換しました。
このように、リーディングDXスクール事業のキックオフ会議は、多数の参加者による盛り上がった議論が行われる場となりました。今後、この事業を通じてどのような事例が創出されていくか、大きな期待が寄せられています。