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新潟市立鏡淵小学校の「特別支援教育」におけるICT活用と校務DXへの取組 リーディングDXスクール事業 公開学習会 リポートVol.3

2024.1.17

2023年8月30日に実施された“リーディングDXスクール事業”第3回公開学習会では、新潟市立鏡淵(かがみふち)小学校の教頭先生、そして教務主任の先生がオンライン登壇し、同校での特別支援教育の取組と校務DXの取組について紹介がありました。
ファシリテーターとして新潟市立大野小学校の片山敏郎校長先生をお招きし、今回の学習会の趣旨に加え、ご自身が管理職として実践してきたマネジメントについても発表がありました。
本記事では、公開学習会と質疑応答の様子についてリポートします。

ファシリテーター

新潟市立大野小学校 校長 片山敏郎 氏

登壇者

新潟市立鏡淵小学校 教頭 木村杏子 氏
新潟市立鏡淵小学校 教務主任 齋藤航 氏

新潟市における教育の情報化ビジョン

最初にファシリテーターを務める新潟市立大野小学校の校長、片山敏郎先生より、リーディングDXスクール事業の趣旨と、本学習会での発表内容について紹介がありました。

リーディングDXスクール事業では、“標準仕様×クラウド活用”により、一人ひとりの子どもを主語とした授業作りを目指すことを掲げています。

「今回新潟市の事例紹介では、1つの趣旨である“誰一人取り残さない”にクローズアップして、特別支援教育の観点からICTの活用方法について発表します」と語り、鏡淵小学校での実践紹介へと移りました。

新潟市立鏡淵小学校における特別支援教育の取組

次に登壇したのは、新潟市立鏡淵小学校の教頭、木村杏子先生です。

鏡淵小学校では知的特別支援学級が1学級、自閉症・情緒が1学級、病弱が2学級設置されており、県内でも特別支援教育の中心校として位置付けられています。

木村先生からは、鏡淵小学校の院内学級(病弱特別支援学級)での取組と、通級指導教室の職員と連携した取組の2つについて発表がありました。

院内学級ではタブレット端末が不可欠な存在に

鏡淵小学校の病弱特別支援学級(ひまわり学級)は、新潟県立がんセンター新潟病院に平成13年に設置されました。

入院する子どもたちの多くが白血病の治療を受けている児童で、中には1年以上という長期の入院を余儀なくされるケースもあります。

こうした状況下において、院内学級にタブレットを導入したところ、現在では学びを支えるための必要不可欠なツールに位置付けられるようになったといいます。

たとえば、端末を活用することで原籍校の授業をオンラインで受けることが可能になりました。

また従来は体力面・病院の環境面から難しいとされていた、鍵盤ハーモニカを演奏する授業や絵を描く授業についても、端末に入っている演奏・描画アプリを使うことで、院内学級の児童が音楽や美術の学びを楽しめるようになったといいます。

通常の学級で書字に課題があった児童Aの事例

続いて木村先生が取り上げたのは、学習の困難さがある子どもの児童Aへの支援事例です。

児童Aは、入学時から書字に困難さや極端な不器用さがみられ、学年が上がるにつれて顕著になっていき、登校渋りも見え始めていたといいます。

「学校が本人にとって『できない自分を再認識する場所』になっているのではないかと考え、個別の支援を必要と認識していましたが、忙しい日々の中で担任が一人で対応することは困難です。」

そこで鏡淵小学校では、通級指導教室を担当する専門性の高い職員と連携しながら、2週間と期間を区切りながら支援をスタート。

そして、支援に入ることのできる職員はGoogleカレンダーで対応可能な時間を共有し、特別支援教育コーディネーターが担当者を割り振り、それに沿って支援を実施しました。

「支援の中で気づいたことや進捗状況はスプレッドシートに書き込み、Microsoft Teamsで共有しました。本人の取組は日々OneNoteに記録して、成果が見えるようにしています。」

このような取組の結果、それぞれの支援担当者から多くの“気づき”が寄せられ、今後の支援を考える上では非常に有効だったとのことです。

タブレット端末の機能を経験させ自己選択を支援する

音楽の授業も担当しているという木村先生は、リコーダーの運指表や楽譜などを模範演奏動画と一緒に子どもたちにデジタル配布する取組も実践しているといいます。

「子どもたちが自分で学習にアクセスできるように、端末の機能やスキルを経験させ、最終的に自分で必要なものを選択しながら学ぶことを目指しています。」

新潟市で配布するiPadは、読み上げ機能や拡大機能、音声入力などのアクセシビリティが非常に充実しているのも特徴です。

しかし学習の中では使用しないことが多く、機能の存在を知らない子も少なくないそうです。

このような問題点について木村先生は「私たち教師にできるのは、学習の中でそれらを経験させて、自己選択しながらスムーズに使えるようにしていくことだと考えています。」と語りました。

質疑応答

事前に寄せられた質問の中から、木村先生には次の質問に答えていただきました。

教頭という立場としてどのようにGIGAを進めてきたのか?

木村先生は今年度から教頭を務める中で、さまざまな試行錯誤をしつつも、まず『みんなが同じ土俵に上がるためにどうすればいいのか?』を職員と話し合いながら進めてきたといいます。

「私自身、子どもも教師もトライアンドエラーが大事だと考えています。そのためアイデアが上がってきた時にも、まず試してみるように声かけをしています。」

先生方一人ひとりが楽しみながら取り組めるよう、前向きに挑戦できるように背中を押すことが、教頭としての役割ではないかと回答しました。

新潟市立鏡淵小学校における校務DXへの取組

続いては、木村教頭先生のもとで教務主任として校務DXを進める齋藤航先生による、校務改善についての発表です。

「『働き改革を』と言われても、大きく改革するのはなかなか難しい。そこで私たちは、まずはそれぞれの担当している業務の中でできることから、小さくコツコツと取り組んでいます。」

今回は業務時間の短縮、簡便化のために職員間でアイデアを出し合いながら実践している事例について、詳しく解説がありました。

メール配信やGoogleフォームを使った校務改善

鏡淵小学校での具体的な取組として、メールを活用したお便りのデジタル配信が挙げられます。

保護者や教職員に加えて、民生委員、放課後児童クラブの方にも登録を促しながら、これまで紙で配布していたお便りをデジタル化しました。

その結果、保護者・地域に確実に情報が届くようになり、いつでも見返すことができるようになったほか、印刷・配布作業にかかる時間短縮が実現できたといいます。

学校評価アンケートではGoogleフォームを活用することにより、従来は紙面でアンケート用紙を配布して回収・集計とかなりの手間がかかっていたところ、大幅に改善できたと語ります。

Googleスプレッドシートによる欠席状況の把握

鏡淵小学校での特徴的な取組として、Googleスプレッドシートの活用が挙げられます。

同校ではGoogleスプレッドシートを、主に児童の欠席状況の共有のために使用していると齋藤先生は語りました。

「これまでは児童の欠席・遅刻の連絡は電話または連絡帳で行うことになっており、保護者からの連絡が遅れると、その旨を書いたメモを職員が担任に渡すという手間が発生していました。」

そこでGoogleスプレッドシートの活用により、連絡を受けた職員がシートに記入して共有し、担任は教室にいながらタブレット端末で最新の連絡状況を把握できるようになったといいます。

「また、養護教諭はこれまで全教室を回って欠席状況を把握していましたが、Googleスプレッドシートの活用により、その手間が省けるようになったことも大きな成果です。」

Googleスプレッドシートを使う中で、改善案や意見などが多く寄せられたといいますが、校内ではそのための知識や時間が不足していました。

その旨をICT支援員に相談して専用のアプリケーションを開発してもらい、職員の要望を反映しながらより良いシステムを構築していると語りました。

「ICT支援員さんは、こちらから依頼がない時には各教室を周り、先生や子どもたちのフォローもしてくれるなど、非常に助かっています。」

新たなやり方に抵抗を感じる職員、ITが苦手な職員にどう接するか

「これまで長年続けてきたやり方を変え、ICTを取り入れることは面倒なことでもありますし、抵抗を感じる職員もいます。また、コンピュータが苦手な職員も多いです。」

そう語りつつも齋藤先生は、同校での雰囲気作りについて紹介がありました。

「職員が気軽に聞ける雰囲気、とりあえずやってみようと前向きに取り組む風土があります。そのおかげで、スムーズに校務DXが進んでいます。」

最後に齋藤先生は、「校務DXを進めていくためには、日頃からの雰囲気作りに加えて、ICT活用の成果について互いに称え合うことが大切です」と結びました。

質疑応答

続いて質疑応答の時間として、事前に寄せられた質問へ齋藤先生に答えていただきました。

校務改革を進めていく上での壁をどう乗り越えてきたのか?

「まずは職員の理解・協力が大切です。」

齋藤先生によれば、利用できるアプリケーションがそれぞれどんな機能を持っており、どんな良さがあるのかは使ってみないとわからない部分があるため、コンピュータが得意な職員が『こんなこともできますよ』と、気軽に紹介する雰囲気があったことが大きな要因だったといいます。

「そのアイデアについて会議で試してみた結果、こんなことにも使えそうだなという理解にもつながるので、こうした機会を設けることが重要だと考えます。」

また、同校での保護者からの反応として、PTAでは保護者から積極的にZoomを使ったデジタル会議を提案されたり、PTA便りや資料のデジタル化を要望されたりと、協力的な姿勢が得られていることも紹介がありました。

校長としてのマネジメントについて

次に、ファシリテーターを務める片山先生より、ご自身が管理職としてこれまでどのようにマネジメントしてきたのか解説がありました。

片山先生はもともと市教委で指導主事を務めた経歴をお持ちで、実際に校長として現場に着任してきた際に、まだまだ一斉指導型の授業観が多いことを課題として実感したといいます。

では、どのように授業観を転換すれば良いのか。

片山先生は発表の中で、授業改善の6つの取組、そして校務改善の7つの取組を紹介しました。

最後に伝えたいメッセージ

本学習会の最後に、登壇した2名の先生からメッセージをいただきました。

まずは木村先生から。

「若い職員たちが願いを持って取り組んでいる姿を見て、彼らを応援しながら進めていくことが私たちの仕事だと実感しています。管理職としてこれからも、前向きな先生の応援を続けていきたいと思います。」

続いて齋藤先生のメッセージです。

「私も同様に、若い職員たちが出してくれるアイデアを邪魔しないように、彼らと協力しながら取り組んでいきたいと思っています。」